珈琲の雨 2

前回の続き

あれだけ飲めないと思っていたコーヒーが美味しく感じる日がくるとは!

それからは毎回店主が「おすそわけ」をくれる。

浅めのあっさりすっきりなものから深く濃いとろりとしたものまで、挑戦、挑戦。

豆や抽出方法で全然味が違う。おもしろい!

ここの抽出はネルドリップ。ほわんとやわらか、まぁるい味。

あれだけカフェオレとカフェラテしか飲めなかったのに、味の違いがほんのり分かった。

それからは「おすそわけ」でなく自ら「珈琲ください!」と注文するように。

何度も飲んでいくうちに好みの味が見つかってきた。

ある日、店主から「ぽっ」とやさしく言葉を投げられた。

「珈琲、淹れてみる?」

・・・え?・・・え!やっていいの!?

初めて自分で珈琲を淹れることに。

カウンターの席からいつも見ていた風景の中に入る。

豆を挽いて? お湯は何℃かな? どのくらいの時間で?

店主がひとつひとつ丁寧に教えてくれているのに、あたふた、あたふた。

やっと出来上がった珈琲を見て、嬉しさで笑顔になり、その後すこし涙でうるうるした。

高速瞬きをして無理矢理ひっこめた あの時のうるうるは、おそらく誰も気づいていなかっただろうけど、私の大切な感情だったと思う。

ひとくち、ごくり。・・・・・?

「なんかぬるーい!薄いよね!」

いつものおいしい珈琲では無かった。

でもそれでよかった。それがよかった。

そんな珈琲なのにすごく嬉しかった。

それから店主が幾度か 私が自分で珈琲を淹れる時間を作ってくれた。

店主がまた「ぽっ」っと声をかける。

「お客さんに珈琲提供したくない?」

・・・この店主、何を考えている!?

もうすぐおしまい、また次回!

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