写真の雨 1

好きなこと、ひとつぶ紹介。今回は”写真”の雨のおはなし。

私が小学5年生の頃。

毎日友達と遊ぶのは楽しいし、何気なく見るテレビも、CDで聴く音楽も普通に好きだった。

でも、子どもながらにそれだけの毎日では何か足りないと思っていた。

何も残らない日々を過ごしてるのが物足りないというか。

学校から帰って近所の友達と集合。

私はお年玉で買ったipod touchを持ってみんなと散歩するのが日課になっていた。

動物好きで猫みたいな子、普段はおとなしいけどふざけだすと静かにおもしろい子、生粋のジャニーズ好きの子。そして私。だいたい4人でだらだらと歩く。

木の棒を拾って魔法をかけあう遊びが始まったり、ただただ変顔したり、だらだら歩く道。

ジャニーズ好きの子がふと話し始めた。

「私の好きなグループの1人が、毎日空の写真をタイムラインに投稿するんっちゃ。」

みんなあんまり興味なかった。私も、ふうん。と思うくらいだった。

一応、聞いてみた。

「カメラで撮るん?」

「いや、多分スマホ。」

また、ふうん。と思った。私、スマホ持ってないや。

・・・いや、スマホもどきは今ポケットの中にいる。カメラ機能付き。

日が沈んでくる時間。なんとなく思い立って。

「じゃあ、いつものグラウンドで空撮ってみる?」

少し背が高いフェンスにつかまりながら、日が沈むほうを4人で見つめる。

『カシャ』っと一枚。残る夕日。

それからだんだんと暗くなり、帰りの時間を知らせるチャイムがなる。解散。

私は家に帰り、なんだかそわそわした。夕ご飯を作り終えた母に

「お母ちゃん、今日ね、写真撮ったんよ。」

嬉し恥ずかしのよくわからない感情だったのを覚えている。

「いいやん、綺麗やん!」

褒められた!小学5年生の私は調子にのる。

でもなんだか違和感があった。私がグラウンドで見た夕日ってこんなんだったっけ?

自分の見たままに残したい。アプリを探し、色を調整してみる。あ、こんなのだったかも。

コントラストってなんだ。色温度?どういうこと?

用語はわからないまま写真をいじっていくうちに、自分の世界に入り込んでいた。

できた。できた。るんるんになって母に見せる。

「さっきの、もっとこんな感じやったわ!」

何気ない、毎日見ていた夕日を綺麗だと思ったこの日。

ひとつ明かりの灯るような感覚があった。

小学生の時に撮った写真を一枚。

続きはまた次回。

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