写真の雨 3

前回の続き

時間が少しでもあればちいさなバイクに乗ってちょっとそこまで。

ひとりで写真を撮りに行くことが多くなり、残っていくそれが好きだった。

ある日、家の近くに古着屋さんがあることを知る。

二階建て。素敵な古着や小物。緊張しながらお店に入った。

奥から聞こえる「こんにちは」とふたりの男性。

ふわっとした自己紹介からはじまり、はじめましてとは思えないほどたくさんお話をした。

「お写真、撮ってもいいですか?」

撮りたくなった。素敵な場所と素敵なひとの出会いを残したくなった。

二階に上がりかけたひとりの男性が反応してくれた。

「写真、やってんの?」

その男性は、カメラマンで二階にアトリエを持っていた。

「まぁ、iphoneで趣味程度ですが。」

正直怖かった。プロから見た私の写真は、「写真」なのだろうか。とか考えた。

私の「写真」を見せることになったんだけど、意外と反応が良くて嬉しくなる。優しい人でよかった・・・。

帰り際にもらった「またおいで」の言葉通り、毎日のように入り浸る。

一階の古着屋さんと二階のアトリエを行き来して、麦茶一杯で何時間もただひたすらに話をする。今思えば、迷惑客になっていただろうと思う。

いつものように遊びにきていた私に、カメラマンがこう言う。

「フィルムカメラとか興味ないん?」

「あるけど、お金ないし、できるかどうかもわからない。」

本当の気持ちをふうっとはきだすと

「じゃあ、これ、使って。新しいものではないけど、使えるはず。」

黒に赤の線のアクセント。しかくい感じのフィルムカメラを私の手の中に。

「えぇ!?カメラとか高いしこんなんもらっていいん!?」

使い方を教わり、一枚試し撮り。いつもとは違う感覚。大切に思えた。

嬉しくてカメラをiphoneの写真に残した。

数日後、旅行にカメラを持って行った。36枚撮り終えて、フィルム巻き戻しのところで「ウィ。」と嫌な音。

もらったばかりのカメラを数日で見事に置物化させた。

クラッシャーと呼ばれた私の初のフィルム写真、ぎりぎり無事な一枚。

もうすぐおしまい、また次回。

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