前回の続き
時間が少しでもあればちいさなバイクに乗ってちょっとそこまで。
ひとりで写真を撮りに行くことが多くなり、残っていくそれが好きだった。
ある日、家の近くに古着屋さんがあることを知る。
二階建て。素敵な古着や小物。緊張しながらお店に入った。
奥から聞こえる「こんにちは」とふたりの男性。
ふわっとした自己紹介からはじまり、はじめましてとは思えないほどたくさんお話をした。
「お写真、撮ってもいいですか?」
撮りたくなった。素敵な場所と素敵なひとの出会いを残したくなった。
二階に上がりかけたひとりの男性が反応してくれた。
「写真、やってんの?」
その男性は、カメラマンで二階にアトリエを持っていた。
「まぁ、iphoneで趣味程度ですが。」
正直怖かった。プロから見た私の写真は、「写真」なのだろうか。とか考えた。
私の「写真」を見せることになったんだけど、意外と反応が良くて嬉しくなる。優しい人でよかった・・・。
帰り際にもらった「またおいで」の言葉通り、毎日のように入り浸る。
一階の古着屋さんと二階のアトリエを行き来して、麦茶一杯で何時間もただひたすらに話をする。今思えば、迷惑客になっていただろうと思う。
いつものように遊びにきていた私に、カメラマンがこう言う。
「フィルムカメラとか興味ないん?」
「あるけど、お金ないし、できるかどうかもわからない。」
本当の気持ちをふうっとはきだすと
「じゃあ、これ、使って。新しいものではないけど、使えるはず。」
黒に赤の線のアクセント。しかくい感じのフィルムカメラを私の手の中に。
「えぇ!?カメラとか高いしこんなんもらっていいん!?」
使い方を教わり、一枚試し撮り。いつもとは違う感覚。大切に思えた。
嬉しくてカメラをiphoneの写真に残した。
数日後、旅行にカメラを持って行った。36枚撮り終えて、フィルム巻き戻しのところで「ウィ。」と嫌な音。
もらったばかりのカメラを数日で見事に置物化させた。
クラッシャーと呼ばれた私の初のフィルム写真、ぎりぎり無事な一枚。
もうすぐおしまい、また次回。